空白の街

茶の間のとりとめのない感想をつらつらと。

『舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱」』感想

公演終了からだいぶん日が過ぎてしまったけど振り返り用に感想を書き残しておく。


2020.09.22 12:30開演
舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱」
@ステラボール(配信視聴)


初演の円盤を覚えるくらい繰り返し見たのが今年の始めのこと。
勢いで2作目の円盤を購入し今作視聴前日に見終わった。それから迎えた今作。

文劇ってやっぱり面白い、と思った。
今作は「たとひ魂が砕けても、想いは砕けない」という文アルのコピーへの文劇なりの答えだったのかなぁと思う。

今回は舞台のセットだったり劇中のシーンの端々だったり全体的にアニメに通じる雰囲気を感じる作りになっていたように思う。
特にアニメの4、5話。多分これらが文アルの核なんだろうなぁ


全体的なストーリーとしては地獄的なようでいて希望のある結末を迎えるところに、やはり文劇は光だなぁと思った。

ざっくり、館長(侵蝕者)の理想実現のために翻弄される転生したての太宰くんと抗う文豪たちの話、という感じ。

わりと早い段階で黒幕は館長っていうのが分かったから太宰くんが館長に誘導されていくところを見てるのすごいソワソワした。早く思惑に気づいてくれ……!って気持ちでいっぱいだった。
というのも館長の台詞からなんとなく察せられるのと、アンサンブルの表現でこちらにめちゃめちゃ気付かせてくる演出だったから……。

館長と太宰のシーンは二人の会話もだけど、後ろの人達の動きも館長の思惑を表現していたりかなり重要なことをやってて見逃せない。
私は吉谷さんのアンサンブルの使い方がとても好きなんだけど、今回は特にアンサンブルの動きも重要なところなので全景映像がほしい……。


今回前半と後半の温度差で風邪ひきそうだった。
後半はもはや山場の連続でその最たる山場である文豪たちが没年順にやられていくところ、侵蝕者まじで悪趣味だな~!と思った。悪趣味。劇中でも言及されてたけど。
中也のシーンは演出と配信のカメラワークも相まってトラウマになりそう。何回見てもあのシーンはこわい。
そして垂れ幕の演出。
配信では表情映してくれなかったけど、先に死んだ文豪が落ちた垂れ幕を大事に抱えて捌けていくのがあまりにもつらい。いっそう彼らの死が印象的になって天才の演出だった。


最後の太宰と芥川のシーンは演じてる二人が初演と全く同じトーンで芝居するから鳥肌立った。それでいて「また会えたね」だけは今作の芥川で、同じ人物なのにこんなに違うく表現できるんだ…すごい……とただただ感嘆してしまった。
太宰も登場した瞬間から初演と違う太宰だと思わされたし、今作もただひたすらに役者の表現力に脱帽した。解釈無限大……
そして最後まで見て初演の太宰のラストの台詞にさらに重みが出るのがすごくいいなと思った。

終わり方、今作を初演の前日譚とする見方もできるし、全く新しい話の始まりと捉えることもできるし、全体的にもいろいろと想像できる余地があって面白かった。もう一度初演から見たらまた印象変わりそうで面白そう。


作品があるかぎり、そこに込めた思いも残り続けるし、触れた人の心に灯をともし続ける。思いを紡ぎ続ける。
思いを繋いでいく人がいる限り道はずっと永遠に続いていく。綴り人の輪唱ってそういうことなのかなと思った。
3作通して投げ掛けてきた願いや祈りのような「生きろ」もここに繋がるような気がする。
そしてもはや文劇そのものがひとつの文学になったようだなとも思った。


円盤出る頃にはまた印象変わりそうでそれもまた楽しみ!もちろん作品の核やメッセージは変わらないけど、自分の置かれてる環境次第でまた受け方・見え方が変わるんじゃないかと思うんだよね。


そしてカテコがまた大天才!!これまでの主題歌をメドレーアレンジ!こんなの大好きに決まってる!!最高すぎてテンション上がった!


綺麗にまとまったしこれで一先ず一区切りとしても、是非新章として第4弾を期待したいところ。
というかめちゃめちゃいい終わり方だったから余計にこれで4弾なきゃウソでしょ?!って気持ちなので何卒よろしくお願いいたします……!



今年の始めに文劇を円盤で観てから原作にもハマってしまってアニメも見て、次は絶対劇場で観たい!と思っていたけど現実はそうはいかず、あえなく配信での視聴となりました。

やはり演劇は生で観るのが一番だなと思った。劇場で頭から爪先までどっぷり世界観に浸って終演後に語彙力のない感想を友人と言い合う、そんな当たり前の日々が早く戻ってきてほしいな。